・前回のあらすじ
ついにアーモロードの迷宮の最下層へ到達したアステリア。
己の信じる道の為、その歩みを進めるのであった。
・前回⇩
https://kimagure-azuma.jp/play-sq3r-62/
第5階層終盤のネタバレが含まれます
「またまぶしいところですね」
「みんな、遮光器は持ってるわね」
「ええ、抜かりはありません」
「ここが最下層なら、何があっても驚かないわね……」
「注意してしすぎることはありません。気を付けましょう」
「黒い……オオヤマネコ!?」
「姫様、テュール様、警戒してください!」
「……冒険の始まりを思い出す。しかし、我らを止めることはできぬ!」
「今こそ!刃の慈悲を賜らん! ―――白刃一閃!」
(この技は……!?)
「今、何が……!?」
>シルヴィアは静かに刀を納める
「動きが全く見えなかった……。もしや、今のが―――」
「これがショーグンの極意、『介錯』のようです。自然と体が動いてしまいました」
「きれいに真っ二つ……」
「今の動き方だと、血の匂いで勝手に発動してしまうようね」
「そ、それって、仲間のにも反応しちゃうってことじゃ……?」
「……そうでしょうね。できる限り被害が出ぬように采配しますが、
発動してしまったら味方には峰打ちで済ませるようにしなくては」
「姫様、できればボクの分身だけを狙ってくださいね……?
姫様が仲間を斬り殺すなんて惨劇、見たくありません」
「ええ、こちらでも気を付けます」
(会話こそ物騒だけど、このふたりは良い信頼関係ができているわね)
「やっぱりあるのね、鳥居」
「しかし、以前の傾向から飛ばされる方向にある程度アタリを付けられる。
ここから鳥居を潜ると、このエリアの入口北に出るはず」
「では、一度仕切り直して南側の鳥居を潜りましょうか」
「くぐるとばひゅーんってなるの、なんでだろ」
「千年以上前に存在していた技術が使われている可能性がありそうだけど、
さすがに元老院でもあたしらには教えてくれなさそうだもんなぁ」
「エーテルや術式などの技術の多くが千年くらい前からで偏っているのも、
なんだか不思議ですよね」
「研究すれば面白いことがわかりそうですが、まあ、それは当分先の話です」
「うげっ、あれって第1階層の臭いヤツじゃん」
「姿は似ていますが、より毒々しいですね」
「ここに来て出てくるということは、相当危険と見るべきね。
プレール、キルシェ、一気に燃やしてしまいなさい!」
「効いた! でも、なんかヤバそうな気配が……!」
「異様な刺激臭……。まずい、毒か酸を吹くつもり!?」
「させるか!」
「あんなおっきいのを!」
(迷いを完全に捨て去った姫様がここまで強いなんて……!)
「また二重の鳥居か」
「でも、これどうやって手前のを潜ればいいの? 隙間なく並んでない?」
「奥の鳥居を潜る前に引き返せば行けそうですが……」
「お葉の言うとおりにやれば良さそうですね。
皆さん、進み過ぎないように気を付けてください」
「こ、この群れは……!」
「……撤退は余計に危険ね。どう切り崩す?」
「姉上はショックガードを。どの敵も危険ですが、まずあのウサギを仕留めます!」
「味方に雷を強化してもらっておきながらながら体当たりとは……。
群れていても所詮は獣か」
「あたしらのチームワーク、ナメてもらっちゃ困るわ!
最大火力、灼熱の術式!」
「解き放て!」
「南北には鳥居……。迂闊には進めませんね」
「おたからなにかな」
「これは……奥義の書かしら。強力そうだけど、扱いも難しそう」
「こんなところにあるということは、王家に関わりの深い人物が
記したものなのかもしれませんね」
「……よく考えたら、あたしら王家の森でいろいろパクってきちゃったわ」
「一刻を争う事態ですから、元老院も多少は目溢ししてくれるでしょう」
「まあ、「森を荒らすな」とだけしか言われませんでしたからね……。
そろそろ道具の消耗が激しくなったので、一度帰還しましょう」
「ええ。そういえば、貴女には言ってなかったっけ」
「……ふふ、そうよね。冒険者であってもそうでなくても、
未だ見ぬもののために生きていくのは同じだもの」
「いいことを言ってくれますね、店主さん。そうそう、前に頼んでおいた
補給品は元老院に送っていただけましたか?」
「店主さん、なんかいつもとかんじがちがいますね」
「なんとなく……」
「いや、ちょーっとまだ油断できないわよ?」
「もう、そういう言葉はいつだって歓迎してるのに。意地悪ね」
「いまの店主さんって、つんでれって言うんですか?」
「いや、こういう場合には使わないでしょ」
「おっと、採集部隊の再編成もしないといけませんね。
宿に行く前に、冒険者ギルドにも寄っていきましょう」
「おやおや、この我々が今更”新米冒険者”呼ばわりとは。
早朝からお忙しそうですわね、ギルド長」
「ぷぷ、いつもカッコつけた感じのギルド長がこんな間違いするなんて。
ギャップのせいでよけい可笑しいわ。……ぷっ」
「き、キルシェさん、失礼ですよ!?」
「”憧れ”、ねぇ。……その人たちは祖国でのわたしたちを知って、
それでもなお憧れ続けることができるのかしら」
「いいえ、姉上。憧れは永遠に尊く在るべきです。それに、その者たちは
”冒険者としての我々”を目指そうとしているだけなのですよ」
(……そうよね。国での将としてのシギーやユーンは、外の人からすると
”大量殺人者”と見られたっておかしくはないんだものね……)
「……ふふ、お気遣い感謝します、ギルド長。しかし我々はもう、
己の意志を挫くようなことはしませんわ。―――決して」
(意志……。そうだ。もう隠し事なんか止めよう。今度こそ、姫様に―――)
「……」
「あの、姫様。お話したいことがあるのですが、……よろしいでしょうか」
「……ええ、いいですよ。皆さん、先に宿へ戻ってください」
「ん、わかった」
「すみません、お疲れのところを」
「構いませんよ。……貴方が話したいという事、大方の予想はついています。
しかし、話せば引き返すことはできません。それでも、……いいのですか?」
「……はい」
>シルヴィアは小さく頷き、静かにその先の言葉を待つ
「……ボクの父―――義父は、東国のとある里を治める領主でした」
「……」
「子がいなかった義父は孤児であったボクに、本当に良くしてくれました。
それこそまるで、本当に血の繋がった親子のように」
>お葉は明るくなり始めた海に目を向ける
「刀の扱いや忍術、将来のための学問も、全て義父から学んだものです。
不幸の星の下に生まれようとも幸せになってほしいと、義父は言いました」
「……なるほど。素晴らしい御方だったのですね」
「しかし、そんな生活は突然終わりを迎えました。
義父を恨む者が謀反を起こし、義父とボクは捕らえられました」
「……!」
「そしてボクは、謀反を起こした者たちから選択を突き付けられました。
このまま死ぬか、自身の手で義父を殺すか―――選べ、と」
>お葉は青ざめた顔で話を続ける
「義父への恩を仇で返すことになるとわかっていながら……、
ボクは―――義父をこの手に掛けてしまったのです」
>お葉は体を震わせながら言葉を続ける
「自分の命惜しさに……敬愛する父を……こ、この手で……!!」
>シルヴィアは何も言わず、お葉を見つめる
「義父は最期に―――笑っていました。いつものような、優しい微笑みで。
その父の様子を見て……ボクの見る世界は昏く染まっていきました」
「……」
「取るに足らぬ子供と思ったのでしょう、その者達はボクを見逃して去りました。
……それからボクは、名前も姿も変え、里を離れました」
「―――”復讐”の為に」
>早朝の誰もいない港に、穏やかな波の音だけが響く
「……そして数年して、ボクはその者たちの懐に潜り、仇を討ちました。
しかし復讐は成したものの、残党から執拗な追撃を受け、力尽きてしまいました」
「……なるほど。だからあのような場所で倒れていたのですね」
「その時は、どうせ捨てられていた命だからと自棄になっていたのかも、
生まれてこなければよかっただのと考えていたかもしれません。ただ―――」
>お葉は「ただひたすらに虚しかった、という記憶はある」と呟き、しばし沈黙する
「ボクは、本来は姫様のような方の隣に居られるような人間ではないのです。
しかし―――」
>お葉はシルヴィアに向き直る
「それでも姫様は、こんな自分を何も言わずに受け入れてくれた。
―――それを恐ろしく思いつつも、ボクは必死に、それに縋りついた」
>シルヴィアは静かに、真っ直ぐにお葉を見つめる
「……あの流星群の夜の、フレイヤ様が現れる前の姫様の叫び。
それはきっと、ボクの叫びでもあったのかもしれません」
「……」
「過去から逃げ続けていた自分への―――叫びだったのかもしれません」
「貴方とは惹かれ合う運命にあったのかもしれませんね。
我々は、復讐者であったという過去を持つ者同士なのですから」
>お葉は義父から贈られたという鋏を静かに取り出す
「……姫様に過去をお話しできて、ようやく決心がつきました。
ボクは、自身の過去と決別します。過去の己との―――『縁』を断ちます」
>お葉はかちりと鋏を打ち鳴らし、それを静かに水底へ送る
「……ボクは主君シグドリーヴァ・ロタに仕える生まれながらの臣下、お葉。
姫様、今後とも―――よろしくお願いします」
「ええ。お葉、これからも期待していますわ」
「……あっ。そ、そういえば、もうひとつ言わなきゃならなかったことが。
あ、あの、姫様。実はボクは、その―――」
>シルヴィアはお葉の唇に指を当てる
「それはきっと、貴方の”もう存在しない過去”に関わることなのでしょう?
貴方は、昔から私と供に在り続けた臣下のお葉。それ以外に、何も無いはずです」
>シルヴィアは朝焼けに染まりゆく街の方向へ歩き出す
「ほらお葉、お供なさい。美味しい朝食を食べそびれてしまいますよ」
「あっ、ま、待ってくださいよ、姫様!」
>慌てて走り寄るお葉を横目に、シルヴィアは独り思う
(姉様、きっと貴女がお葉と引き合わせてくださったのですね。
私の持つ指輪。これを託すことができるのは、きっと―――)
>シルヴィアとお葉が去った場に、ひとつの影が姿を現す
(……お葉、貴方ならばシグドリーヴァを安心して任せられる。
どうかこれからも、彼女を支えてあげて)
「まーったく……! シギーもお葉もどこ行ってたのさ!
すっかりコーヒーが冷めちゃったじゃないの」
「ごめんなさいね。プロポーズを受けていたら、すっかり―――」
「い、いや、姫様!? そういう話じゃなかったでしょう……!?」
「あんたら……。ま、でもさ。なんやかんやでふたりはお似合いかも。
お葉、あたしは応援してるからね」
「テュール様、ごはんを食べたらすぐ出かけますか?」
「そうね。多くのギルドの協力を取り付けたとはいえ、万が一という
可能性はいつでも付いて回る。でも、今はゆっくり食べましょう」
(この感覚……、決戦の時は近い。しかし、今の我々ならば、必ずや―――)
・続き⇩
https://kimagure-azuma.jp/play-sq3r-64/
・詳細なキャラ設定⇩
https://kimagure-azuma.jp/sq123r_chara/
©ATLAS ©SEGA
コメント