・前回のあらすじ
多くの罠を潜り抜け、ついに”永遠に凋まぬ花”を入手したアステリア。
しかし、元老院で深都に不穏な動きがあったことを知らされ―――
・前回⇩
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第4階層のネタバレが含まれます
「お葉、道具の数は足りていますね?」
「はい、これだけあれば」
(……激闘の予感がする。今までの何倍も危険な戦いになる)
「テュール様、弾薬いっぱい用意しましたよ」
「ええ、ありがとう。使わせてもらうわ」
「聖域に見たことが無い魔物……。それも『魔』の影響なのでしょうか」
「うーむ……」
(転移装置は深都の技術で、海底神殿は今ではフカビトの居城。
後付けなのであれば認知していないというのもわからなくも無いが……)
「……グートルーネ王女。なぜ”白亜の森に繋がっていると”不安なのでしょう」
「まさか、その白亜の森に『魔』にとって重要なものがあるんじゃ」
「……可能性としては、今のところそれが大きいかもしれない。
しかし、王家の聖域とされる場所にそんなものが存在するというの?」
「神さまのところにあくまがいるんですか?」
(もしも存在するとすれば、それは――― ……グートルーネ王女。
しかし、根拠は何も無い。……これがただの邪推であれば良いのだが)
「依頼の内容は『転移装置の発見及び制圧』……ですか」
「恐らく、……深王様たちと戦闘になりますよね」
「深王やオランピアのやり方に納得してるわけじゃないけど……。
深都が『魔』と戦う理由を知っちゃってるから……やり辛いわ」
「深王さまって、ほんとはヒーローみたいな方なんですよね?
なんでうちら、戦わないといけないんでしょう」
「それはあくまで、”最悪の場合”という話よ。
……そう、そんなことは起こらない。そう信じましょう、プレール」
「……ええ、無論です。
グートルーネ王女。どうか、我々の無事をお祈りください」
(やはり、グートルーネ王女の言葉には2つの人格があるような気がする。
ひとつは彼女の生来のもの、もうひとつはまるで―――)
>ユーンの視界が揺らぎ、顔に冷や汗が浮かぶ
(―――そう、まるで、……フカビトのような―――)
「テュール様、お汗が」
「……!? そ、そう。教えてくれてありがとう」
>ユーンはプレールが差し出したハンカチで汗をぬぐう
そして静かに目を閉じ、心を落ち着ける
(……迷いは『恐れ』を生む。今はこの仕事のことだけを考えるべきか)
(姉上のあの様子……。恐らく、何かしらの『確信』に至ったのか。
……しかし真相がどうあれ、今”それ”を暴くべきなのだろうか)
「フローディアさん……」
「……はい!」
「うちもみんなをお守りします」
「みんな、頼りにしているわ」
「猶予はあまりないのかもしれませんが、全滅の危険を極力避けて
行動するようにしましょう」
「やはり、こっちにもいたか」
「……よく見るとアイツのお腹の皮、すごく不自然に垂れているような」
「無理矢理肥大化させたうえで、わざと死なない程度に飢えさせているのか?
ならば、狂暴だが生命力はそれほどでもなさそうだが……」
「戦うんですか?」
「……そうね。仮に深王たちと戦うことになるとすれば、今のうちに
我々自身の実力を確認しておく必要がある」
「危険だと判断したら、すぐ撤退しましょう」
「第2階層の海獣に似てるなら……火で毛皮を燃やせば」
「うちも火炎弾をやります」
「ラインガードの技で庇うのは前衛か後衛か……」
「あの筋肉の発達具合…… 一撃が致命傷になりかねない。
重傷を見越して回復行動をとらせるべきか」
(覚悟を、気を強く保つんだ……。どんな怪我を負っても立ち上がれるように)
「うぐ……! 神殿全体を揺るがすような衝撃……!!」
「お葉が直撃を!」
「こ、これしき……! うぐ……」
「お葉、そんな怪我で……!」
「お葉、意識があるのならばマドラを使いなさい!
キルシェは攻撃に集中!」
「効いてる……! あと2回くらいぶち込めれば……!」
「……わかりました。作戦変更! 姉上は後列を護り、お葉は回復薬を!
キルシェが倒れぬようにサポートしなさい!」
(ぶっつけ本番だが、キルシェの行動がより早ければ勝率は上がる……。
この手札を切る他あるまい!)
「風よ纏え! 疾風怒濤の加護を―――此処に!」
「……! 動きがよく見える! ここだ!」
「やりましたね……」
「キルシェさんはやっぱりすごい」
「け、結構いっぱいいっぱいなんだけどね……」
「姉上、どうでしょうか。今の我々は」
「そうね……、実力は十二分にあると言ってもいいわ。
あとは、この力が深部でどれだけ通用するかが鍵ね」
「少なくとも、このFOEを安定した戦局で斃せなければなりませんか。
回復薬を予想外に多く使ってしまったので、一度補給に戻りましょう」
「ほう、この刀が先ほどのFOEの素材でできたものですか」
「お葉ちゃん、どんどんかっこよくなってる」
「刀ってホントいいわよね。ショーグンの才能を開花すれば使えるかな」
「変えてみる?」
「う~ん……、モンクの回復も今は必要じゃん? だから、またいつかかな」
「よし、とりあえず準備は整いましたね。あとは夜まで休憩しましょう」
「や、やっと階段が……!」
「お脚が痛いです……」
「一方通行の立体迷路とか……! ここ、本当に海都の神殿だったの!?」
「明らかに侵入者を意識した迷宮構造でしたね」
「真祖以外とは全く意思疎通できないけれど、人間が建てた神殿を
ここまで改造するとは。思った以上に知能や技術力は高そう」
「B16Fの広間……、ようやくここまで来ましたね」
「深海のさらに深くってこともあるけど……。酷い寒気がする」
「このフロア……、とても不吉な何かを感じます」
「同感だわ。しかし、それでも我々は進まなければならない。十分以上に警戒を」
「あれは……!」
「敵……! ―――いや、あれは……石像?」
「おっきいですね」
「……調べますか?」
「一応ね……」
「扉……みたいだけど、開けられないみたいね」
「手持ちの鍵を使うわけでもないようです。この先は一体……」
「埃が積もってるから、ずっと誰も開けてないみたい。
先に進んだほうがいいのかも」
「ここは……物置でしょうか」
「あそこの隅、何かの機械らしきものがたくさんあるわね」
「……! これ、新しい足跡!」
「……あちこちの機械から部品を取り出した痕跡がある。
もしや、深王たちはすでにこの先に……」
「……急ぎましょう」
(考えうる限りの、最悪の展開が現実になってしまったか)
「戦わなきゃならないんでしょうか」
「……! 全員、静かに。扉の先から声が聞こえる」
「足音は……ふたつ。片方はオランピアのもの。
声も……やはり、深王とオランピアか」
「ヤバい……、先を越された」
「……」
「……このまま突入するべきか。全員、戦闘態勢を―――」
「……!!」
>扉を開こうとしたシルヴィアとユーンは、突然一歩飛び退く!
「お、おふたりとも……!?」
「くっ……!? 経験したことも無い凄まじい殺気を感じた……!」
「まさか……、バレた!?」
「違う。今の殺気は……我々に向けられたものではない。
……そうだというのに、近づいただけで気圧されてしまった」
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