・前回のあらすじ
異様な気配の蔓延るB１４Fを進むアステリア。
迫る罠を掻い潜り、順調に探索を進めるのであった。
・前回⇩
https://kimagure-azuma.jp/play-sq3r-48/
第４階層のネタバレが含まれます
「こっちは行き止まりだったか」
「おたからありませんね」
「まあ、そうそう美味いことはないわ。引き返しましょう」
「……これは」
「お葉、何か気付きましたか？」
「……！ また罠が！？」
「まだ仕掛けは動いていない……、足を離すと起動する罠？
お葉、とりあえずそこを動かないで」
「ここは袋小路……！ 下手したら全滅だわ！」
（れ、冷静にならないと……。姫様たちのように、些細な情報から推理するんだ。
―――あれは？ ……そうか！）
「……！？ お葉、なんてことを！」
（なぜ……？ いや、あそこに転がっているのは……なるほど）
「これ、お薬ですか？」
「これはアムリタⅡだわ。しかしお葉、なぜこれが出てくるとわかったの？」
「そこの隅に、封の空いた同じ瓶がいくつもあったんです。
なので、もしかしたらと思って」
「はあ、それにしても、薬瓶一つのためにご大層な仕掛けね」
「おたからちゃんとありましたね」
「でもお葉。安全なら安全なりに、情報共有も必要でしょう？」
「す、すみません。気が逸っていて……」
「これからは、その点を注意しなければなりませんよ。
しかし、いいものが手に入りましたね」
「ここは……牢獄？」
「閉じ込められるタイプの鉄格子じゃなくてよかったわね……」
「そうね。……いや、この部屋の構造はたしか―――」
「遠い昔、本で学んだ闘技場の控室のようですわね」
「闘技場……。なぜ神殿にそんなものが？」
「”『神』の為に血を捧げよ”、ということなのでしょうね。
戦い抜けたとしても、その人物は生きて太陽を拝めたのかしら」
「なにもしてきませんね」
「肌を刺すような殺気を向けているのに、なぜ目の前に来ても襲ってこない？」
「……思ったんだけどさ、ここのFOEって”檻が開いているときだけ”
襲ってきてない？」
「確かにそうでしたね」
「檻が開いているときにだけ襲ってくる……、そこの鉄格子の挙動……、
なるほど、進み方が見えました。あとは、行動する勇気だけです」
「やっぱり、進むために檻を開けないといけませんよね。
姫様、押しますよ」
「ええ、お願いします。全員、遅れぬように！」
「とおせんぼですね」
「ここは入口から見えていた空間……。階段は、おそらくあの扉の向こうです」
「本当に長い道程だったわ」
「もう少しですね。周囲の地形を確認しましょう」
「なるほど、やはり中央部分が闘技場か」
「四方からFOEが迫ってくるため、逃げ切れなくなる可能性があります。
お葉とキルシェはそれぞれ糸を持っておいてください」
「おしちゃいますよ。ガッチャンこ！」
「す、すごい勢いで来ます！」
「キルシェ、FOEの位置は！」
「全部入った！ このまま出口に！」
「多くの罠がありましたが、全員無事でここまで来られました」
「抜け道もちょうどいいところにあるわね」
「ようやく一区切りか。階段の先を少し覗いてから帰還しましょう」
「……正面と左右に通路がありますね。複雑そうなフロアです」
「風がまるで唸り声みたいに聞こえる……」
「……より危険な気配を感じる。帰還しましょう」
「マスター？ 今日は元気がありませんね」
「まあ、そういうこともあるわよね。とりあえず話してみてよ」
「……そう」
「……」
「なかよしな人がいなくなるのはいやです」
「わかるよ。……本当に、痛いほど、ね」
「……強い人ね」
「そうですね。……お葉、少しいいですか？」
「なんでしょう？」
「気分を晴らすため、組手をしたいのです。なので、冒険者ギルドまで」
「かまいませんが……」
「ありがとうございます。他のみなさんは、ここで休んでいてください」
「わかった」
「……ふう、まさかお葉がここまで腕を上げているとは。
ショーグンの技を極めるつもりでも、これではいけませんね」
「姫様は刀を振る時、力任せにしすぎていますね。
刀は刃を立てて、撫でるように引かないと威力を発揮できないんです」
「なるほど……、見た目通り、繊細な武器なのですね。
お葉、もう少し型について詳しく―――」
「姫様。……どうしてですか？
どうしてそんなに刀の扱いに詳しいのか、と聞かないんですか？」
「……」
「見ず知らずのボクの命を救っていただき、あまつさえ臣下に誘っていだいた、
……そのことにはいくら感謝してもしきれません」
＞お葉は顔を伏せる
「でも、……ボクの過去を知れば、今度こそ見捨てられる。
そんな方ではないとわかっていても、……そう思うと恐ろしいんです」
「……そう思わせてしまっていたとは、己の不徳が致すところですね」
＞その場は、しばし静寂に包まれる
「……貴方を救い、臣下に誘ったことには、３つの理由があります。
まず一つ、３年前の戦以来、我が国は外の人間に厳重な警戒をしています」
「……」
「たとえ死に瀕していたとしても、外の人間である貴方を追放しようとする
輩は必ず現れる。それを防ぐために、わたくしの臣下としたのです」
「……２つめは。それだけで、命を救おうとする理由にはならないのでは？」
「……その様子では、やはり覚えていないようですね。
貴方を救助するために、わたくしが手を伸ばした時―――」
＞シルヴィアはお葉に自分の手を握らせる
「貴方はこの手を取り、微かな意識でこう言いました。
―――”暖かい”、”もう少しだけ生きていたい”……と」
「……！」
「そして……最後に。これは、我ながら本当に身勝手な理由です」
「それは……？」
「その言葉は、―――姉様の最期の御言葉と同じだったのです。
あの冷たく、弱々しくなっていく御手の感触は……もう忘れることができません」
＞シルヴィアの手が震え、力が籠る
「フレイヤ様……」
「……わたくしは、貴方の過去を詮索するつもりはありません。
なので、今まで何も聞かずにおいたのです」
＞シルヴィアはお葉を静かに見つめる
「そして貴方が、例えどのような過去を持っていたとしても、
貴方を見捨てるような真似は決してしないと、ここに誓います」
「姫様……」
「……そろそろ戻りましょうか。
準備を整え、我々はまた昏い迷宮へ潜らなければなりません」
「はい！」
「あれは……！ 真祖が生み出した魔物！」
「……あの時のヤツと、動き方も特徴もあまり変わらない気がする」
「なれば、あの時と同じように戦うべきですね」
「また焼き魚にしちゃいます」
「頼りにしているわ、プレール。まずは焼き鳥の方をお願いしようかしら」
（お葉、プレール、キルシェ。―――皆、本当に強くなった。
……アステリアのリーダーとして、より強く在らねば）
・続き⇩
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・詳細なキャラ設定⇩
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