・前回のあらすじ
順調に第2階層の探索を進めるアステリア。
B5Fも半ばとなった場所でムロツミのカナエと再会するのだが……。
・前回⇩
https://kimagure-azuma.jp/play-sq3r-22/
第2階層のネタバレが含まれます
「ごきげんよう、カナエさん」
「健勝のようでなによりね」
「大丈夫ですか? 顔色が優れないようですが……」
「無理しないで街に戻った方がいいんじゃない?」
「お菓子を食べて元気を出してください」
「……あの、もしよろしければ、相談に乗りますよ」
「一度は共闘した関係です。できる限りのことはしましょう」
「占星術……はあなたもできるでしょうし、このカードで占うわよ」
「……?」
(この様子だと……、トラウマによる恐怖のようね。
しかし、何に……?)
「ねえ、どうする? なんか放っておけないわ、あたし」
「うちも……」
「しかし、無理に聞き出すのも……」
「……」
「カナエ、この際はっきりと言わせていただきます。
非情な言い方になりますが、あなた方は冒険者に全く向いていません」
「な……、姫様!」
「お葉、……口を閉ざしなさい」
「ここまで来れる実力自体は認めます。しかし、心がそれに伴っていない。
生半可な覚悟しかできぬのでは、その命を無駄に散らすことになるでしょう」
「……!!」
(……彼への依存度があまりにも大きすぎる。
”その時”が来てしまったら、彼女は立ち直れるのかしら)
(アガタ、アガタ、アガタって……!
……あいつ、本当に彼女の心をわかっているの!?)
「……キルシェさん?」
「……人の生とは、本来は一度きりなのです。
この忠告を活かすも殺すも、あなた方次第ですわ」
(”本来は”、ね。……あたしたちは、何が特別なんだろう)
「……」
「あの、姫様……。
彼女が何を恐れているのか聞いておきたいのですが……」
「……いいでしょう。しかし、できぬ約束は決してせぬように」
「怖い夢って、嫌ですよね」
「そうね。わたしも、数年前にはよく見ていたわ」
(……!!)
(父さん、母さん……)
「か、カナエさん、もう十分です! 無理をしないでください!」
(……あの時を思い出してしまう)
(あの時の彼らは、まさに真の勇者だったわ)
(……納得はできてると思ってたんだけどな)
「みなさん、どうしたんですか?」
「……行きましょう。我らにできることはありません」
「そうね」
「カナエさん、さようなら」
「キルシェさん。だいじょうぶですか?」
「相方のアガタのやつ、どこにいるのかしらね」
「た、たぶん、カナエさんと別行動してるのでしょう。どうしたんですか?」
「一発ぶん殴ってやろうと思ってる」
「え……!?」
「穏やかではありませんね。あなたらしくもない」
「わかってるわよ、そんなこと。
でも、なぜか無性に苛立ってどうしようもないのよ!」
「無理に落ち着けとは言わないわ。
でも、怒りで目が曇れば何でもないところで倒れてしまうわよ」
「こっちは宝部屋と、磁軸への近道ですか」
「この地形だと、ずっと西に行けば階段でしょうか。
……? 今、そっちの方で気配が……」
「あの人、アガタさんでしょうか。おーい!」
「あ、キルシェさん!お、落ち着いて!」
「止めないでちょうだい! 今回ばかりは抑えられない……!」
「あんた!歯ぁ喰いしばり……!
……どうしたのよ、いつもの無駄な元気は」
「キルシェ。ここは拳を下ろして、冷静に話を聞きましょう」
「……わかったわよ、シギー」
(……シギー?)
「アガタ、いったい何があったの?」
「うちの元気パワーをおすそ分けしますよ」
「カナエが神経質になるような事情を抱えていると知りながら
この第2階層に連れてきた、と? ……度し難い」
「あ、あの……」
「……。 要領を得ませんね。はっきりと申しなさい」
「カナエさん、お父さんを……」
「カナエさんに、そんな過去が……」
「親が、もう戻らない……」
「今更何を言い淀んでるの!?
言いなさいよ、アガタ! 彼女に何があったの!?」
「あわわ、キルシェさん、乱暴はだめ……!」
「……なるほど、繋がった。
やはり、彼女が見た悪夢はトラウマに起因していたんだわ」
「それが、我々を利用してまでここに至った理由なのね」
「カナエさんの記憶、戻るんでしょうか?」
「それほどのことがあったなら、思い出さないほうがいいのでは……?」
「……あなたはあなたなりに、彼女を想っているのですね。
しかし、”記憶が幸福の総てではない”のですよ。忘れてはなりません」
「これ以上は、我らが踏み込むべき問題ではありません。
アガタよ、カナエにとっての幸福とは何か、しかと考えなさい」
「貴方はきっと、賢明な選択ができる。そう期待するわ」
「……」
「さて、下層への階段はそろそろだろうけど、今のうちに
準備を整えておきましょう」
「ちょうど近道も開通できましたからね。そうしましょうか」
「ふう……」
「キルシェさん、元気が無いですね」
「あの、ボクたちでよろしければ相談してください」
「……なんでもないわよ」
「そうですか……。
……あの、そういえば、姫様の事を『シギー』と呼んでいましたが」
「……ん? ああ、つい口に出てたか。あれ、あだ名なのよ。
”シグドリーヴァ”だから、”シギー”って」
「あだ名?」
「話したこと無かったけど、あたし、王女様たちと幼馴染なの」
「そうだったんですか!?どうりで砕けた話し方をしてると思った……」
「でも、いまは『お姫様』とか『王女様』って呼んでますよね。どうしてですか?」
「……あたしの両親、戦場であのふたりを庇って死んだのよ」
「!!」
「別に恨んでるわけじゃない。むしろ、勇敢な最期だったって尊敬してる。
……でも、何年も経ったのに、未だに気持ちが整理できてないの」
「そ……、そう、ですか……」
「あたし、なんでアガタにきつく当たってたのか、やっとわかった。
……カナエさんの過去、あたしと似てるんだ」
「……そういえば」
「知らないうちに自分と重ねて、勝手にアガタの相方みたいに振舞ってた。
バカみたいよね。自分は何の関係も無い赤の他人だってのにさ」
「……」
「……さ、暗い話はもうおしまい。夕食までどうする?」
「あのカードを使ってババ抜きしましょう」
「いや、ジョーカーはどうすんのよ……。
あ、この『FOOL』か『DEVIL』のカードを使えばいいか」
(……ボクは、キルシェさんみたいに過去を告白できるのだろうか?
それとも、最期まで過去を隠し通したまま……)
「やはり、こちらもFOEが立ち塞がってますね」
「動き方はここまでのやつらと同じね。躱すのは容易いわ」
「……」
(……? お葉、あんな難しそうな顔してどうしたのかしら)
「……あっ、ここに抜け道が」
「おお、こんなところに。さすがお葉、よく見ていますね」
「またお宝あるかな」
「やっぱり宝箱ね。中身はテリアカβと……ナイフ?」
「説明書きも付いてますね。
えっと、視神経を遮断する効果がある毒ナイフみたいです」
「なるほどね。これも使い方次第かしら」
「それにしても、ここは不思議な空間ですね」
「そうですね。海底に柱が綺麗に立ってるなんて」
「うーん、でも、柱というには太さや形がおかしいわね」
「先っぽに向かって曲がってますね」
「……あっ、これ、もしかして化石じゃないの!?」
「え!?こんな巨大なものが化石ですか?」
「ふむ。意識して見ると、周囲にも化石らしきものが多く見られますわね」
「太古の昔には、こんな生物がいたのね」
「えっと、酒場で受け取った報告書は……、あったあった」
「地図の写しと、大まかな特徴と……。こんなものでしょうか」
「これくらい情報があれば十分でしょう。帰還した時に提出しますね」
「えーっと、お出汁がよくとれそうなのは……」
「ちょっと!? 歴史的なものだから駄目よ!」
「あらあら」
「あ、ようやく階段が見つかったわ」
「今までに比べると、けっこうすんなりいきましたね」
「我々も、それだけ冒険者としての実力が付いてきたということでしょう」
「うちも、もっと大活躍します」
・続き⇩
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・詳細なキャラ設定⇩
https://kimagure-azuma.jp/sq123r_chara/
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