相も変わらずゼノブレイド2の記事です。
長らく待たせてしまいましたが、イーラの考察です。
もはや警告するまでもないとは思いますが、ネタバレにはご注意ください。
・・・・・・覚悟はいいですか?それでは本題に入りましょう。
・『イーラ王国』
本編が始まる500年前に実在していた王国です。
この国の名前は『憤怒』(ラテン語:Ira)から取られています。
今なお静寂を保つ原生林や広大な草原、白い砂の砂漠など、様々な地形が
一つの巨神獣の上に存在しています。
約千年前には、その強大な力で多くの巨神獣を沈めたとされていますが、
今ではその力は封印され、巨神獣も不完全な姿となっています。
この国は特に建築技術に優れており、国のシンボルたる王宮は当時の
技術としても超高水準なものと認知されていました。
そして、本編、イーラ編共にストーリーの根幹に関わることになる
アデル、ラウラ、シン、カスミの故郷でもあります。
国王は聡明且つ人望ある人物であり、また、国民も根は善良な不良ノポンや
やたらと軽いナンパ男の吟遊詩人、弟が心配でたまらないオネエ系の門番など
本編に負けず劣らずの個性的な人物が多数生活しています。
そんな個性的な民衆も、イーラの有事の際は一致団結し、危機に立ち向かおうと
する気概が感じられ、それぞれ思うところはあるにせよ、このイーラを心から
愛しているのではないかと思われます。
他国との関りは、王子アデルとスペルビア皇帝ユーゴが懇意であることから、
イーラ王国は他国との交流も決して少なくはなく、良好な関係を築いている
ことがわかります。
ここまでで思うことは、「憤怒には程遠いのでは?」ということですね。
その通りです。クエストを進めていくと、この国の人々は本当にいい人ばかり
という印象が深まっていきます。それでもなぜ『憤怒』なのでしょうか。
もう、お分かりですね。
『憤怒(イーラ)』という名前は、すなわち・・・・・・
イーラ編の主人公の一人であり、そして本編の裏の主人公とも言える
『シン』のことを指しています。
500年前のシンは本当に穏やかな人物あり、並の人間はともかく、強大な力を
持つメツに対しても鍔迫り合いで対抗できるほどに腕の立つブレイドでした。
しかしながら、それだけの強さを持ちながらも、訓練ですら積極的ではないほど、
戦いについては思うところがあったようです。
・・・・・・そんな彼が道を踏み外し、大国同士を開戦寸前まで追い込むほど
人間に憎悪を向けるようになったのは、イーラ編が終わった直後のことです。
メツの討伐は辛うじて成ったものの、今度はメツと関わり、その力を後世に
伝える可能性のあるイーラ王国の生き残りを掃討するために、アーケディア軍が
難民のキャンプを襲撃、その過程でドライバーのラウラがシンを庇って
致命傷を負ってしまいました。
(モルスの地でシンはマルベーニの仕業ということを語っていたため、
この出来事は、司祭であるマルベーニが、かつて世界中で暴れまわった
天の聖杯メツのドライバーであるということを隠蔽するための掃討だった
ということがわかる。)
なんとか洞窟に身を隠せたものの、すでにラウラの命は尽きかけ、
シンもコアクリスタルに戻りかけてしまいます。
ラウラは「シンとの絆が消えるのが寂しい」とシンに自身の想いを伝え、
それに対してシンはラウラに『あること』を語ります。
・・・・・・それは、『ブレイドは人間の細胞を取り込むことでマンイーターとなり、
ドライバー亡き後も存在し続けることができる』ということでした。
(この時のラウラの表情は恐怖というよりも、シンがマンイーターとなることで
自分たちの理想としていた道を外れていくこと予感したような、
なんとも悲しい表情だった。事実、未来での彼は・・・・・・。)
「思い出 いっぱい作ろうね」
・・・・・・メツの討伐に向かう直前に、ラウラが言った言葉です。
ラウラもまた、家族として、そして一人の男性としてシンを愛していたゆえの
言葉だったのでしょう。
しかし、シンはどのように受け取ったかはわかりませんが、その言葉の意味は、
『例えどんな結末であっても、最期の瞬間までシンと共に生きていたい』
ということだったのかもしれません。
その言葉を、シンは頑なに守り続けようとしてしまいました。
さらに皮肉なことに、シンは『以前の自分』の日記により、記憶を永遠とする
禁忌『マンイーター』になる方法をすでに知ってしまっています。
例え悪魔に魂を売るような真似をしてでも、ラウラという存在の記憶を、
なんとしても未来に伝えたい。
・・・・・・この時のシンには、愛する者が失われようとしていること、そして、
その愛する者との記憶を失うという焦りと恐怖があったのでしょう。
シンがそれを語り終えると同時に、ラウラは力尽き、この世を去ります。
そしてシンはラウラの心臓を取り込み――
・・・・・・誰よりも優しかった戦士は『修羅』となりました。
自身のドライバーとして、そして、一人の女性として愛した者の死は、
心の楔となり、シンを狂気へ駆り立てていくこととなります。
(この時にカスミがいなかったのは、二手に分かれてサタヒコを守っていたと
考えるのが自然か。そして、カスミがマルベーニのブレイドとなり、その能力を
利用されたことを考えると、マルベーニはカスミを鹵獲するためにラウラたちを
襲撃した可能性もある。)
これだけでも、シンの絶望が根深いものであることがわかりますが、
私はこの他にも『二つの裏切り』があったと推測しています。
まず一つはアデルが率いていた『抵抗軍』です。
抵抗軍はやはり、アデルのカリスマにより纏まっている様子であったので、
シンが単体でアーケディアが黒幕であったことを告げ、協力を仰いだとしても、
それに耳を傾ける者はまずいなかったと思います。
また、当時からアーケディアの影響力は大きく、下手に敵対すると
アルストに居場所そのものが無くなる可能性もあるため、その辺りの事情も
考慮すると、協力できないのも仕方なかったのかもしれません。
(アデル自身はイヤサキ村を興した後の消息は不明である。
シンがアデルに接触できなかった理由がここにあったと思われる。)
二つ目はイーラ編当時の『スペルビア帝国』です。
そもそもスペルビア帝国はイーラ編開始前に、シンが敵視するアーケディアと
共に『シヤ』という軍事国家を滅ぼしています。
それはすなわち、深いところでアーケディアと繋がっているということであり、
アーケディアを倒すことを許諾することはまず無いでしょう。
そして何より、アデルの協力がなく、且つ皇帝であるユーゴが先の戦いで
死亡してしまっていることが致命的です。
ユーゴの死後はおそらくユーゴの兄(名称不明)が執政していると思いますが、
協力を仰いだとしても「弟をみすみす死なせた」という感情があり、
最悪、捕らえられて死罪となる可能性を考えると、やはり協力を仰ぐことは
とてもできません。
二つの裏切りというものは公式で明言されたわけではありません。
しかしながら、シンが死亡したと思われたメツと再会するシーンの背景は
明らかにスペルビア帝国の街中です。
アーケディアから身を隠すのなら、未開の地であるグーラの密林に隠れた方が
都合がいいはずです。
(未開の地であれば、攻める側はそれ相応の調査や準備が必要になる。
もちろん、隠れた方が有利であり、攻め入るのは非常に困難である。)
それでもなぜ、スペルビアの裏路地で蹲っていたのか、その点で考えると、
やはり協力を募ったが門前払いされた(もしくは投獄され、脱獄した)
可能性は否定できないと思います。
もちろん時系列的にも、ここに来る前にイーラ編の『抵抗軍』にも
協力を募ったと考えるのが自然です。
ここまでは推測でしかありませんが、「人間に絶望した」というのなら、
これらの推測も決して不自然ではないと思います。
そして、本編第9話「雨」のラストシーンまで時を進めます。
マスタードライバーとなったレックスの命懸けの説得により、シンはかつて
ラウラと共に望んでいた未来を悟ります。
そして、最期の力で世界樹もろともレックスたちと心中しようとする
マルベーニを、シンもまた最期の力を振り絞り、撃破。
その表情に復讐の色は無く、全力で未来を切り開こうとする意志が浮かびます。
シンはレックスの見出した『希望』を、自身に最後まで協力してくれた
メツに伝えて欲しいと言い残し――
『修羅』はかつての優しい微笑みと共に、雪の花となって消えていきました。
この時にシンのセリフは無く、プレイヤーでしかない我々には心の内を
知ることはできません。
しかし、マルベーニは自身が最も愛し、その死によって狂気に至ることになった
母親の影を最期の瞬間に垣間見ました。
ならばきっと、シンの眼差しの先には、
優しく手を差し伸べるラウラとカスミが居たのでしょう。
500年もの間、世界と、何よりも己自身と戦い続けた戦士、シン。
彼の犯した罪は決して許されるべきとは言えません。
しかしながら、希望を胸に昇天したシンにはラウラやカスミ、アデル、
ユーゴ、サタヒコ、ミルト、そしてヨシツネとベンケイ・・・・・・
彼と共に過ごした者たちと同じ場所に辿り着いてほしい。
もはや願望でしかありませんが、せめてそうであってほしいです。
前回からかなり間が空いてしまいましたが、なんとか記事にできました。
もはや地域名というよりもイーラ編終了後から本編のシンの考察となって
しまいましたが、やはり『ゼノブレイド2』のストーリーの根幹に
関わっている要素なので、それも仕方ないことだと思います。
深く考えていくことで、より好きになっていく作品は今日珍しくなってきたと
思うので、本当に、本当にいい作品に出会えたな、と感じます。
それでは。
※↓反転文章です。興味ない方はスルーしてください。
かなり言い訳がましい話になりますが、書いててとても辛かった文章が
非常に多くありました。
それゆえ筆が進まなかったり、公開してもいいものなのかと思いつつも
書き上げて掲載いたしました。
「なら最初から書くな」と思う人もいるでしょうが、書くと明言した以上、
責任を持って書き上げるべきと思い、完成させました。
※反転終了
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